異邦人

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)

アルベール・カミュの小説。1942年刊。


文学的な位置づけとかそういう詳しい事は知らない。
ただ淡々と語られる主人公ムルソーの内面。
母親が死んでも、殺人を犯しても主人公の心に大きな変化が生まれるわけではない。
ただ冷静に自分と周囲を観察することにしか興味を示さないように。
それが主人公を取り巻く周囲の慌しさと比較されて非常に奇異に映りもする。
つまり取り巻く人間はムルソーと比較して圧倒的に人間臭い(信仰臭い)わけである。
異邦人であるムルソーにその土地に根ざす文化がない。信仰がない。
奇異な存在を異邦人として位置づけ
その関係性によって個々の人間性を描き出したということだろう。


ただ信仰も何もない自分からすれば、共感し得ないし
だからと言ってムルソーのように冷静にもなれない。
何か一つ自分に迫ってくるものを感じられなかった。


文章として流麗で、文学としてはノーベル賞受賞作者でもあるし
そういう意味で一読する価値はきっと充分にあるのだろうとも思ったが。




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