モーレツ!オトナ帝国の逆襲

2001年、原恵一監督


2000年世紀末
エスタデイワンスモアと名乗る組織は
20世紀博というテーマパークを建設し
大人たちの懐かしさにつけこみ、
永遠の20世紀を実現しようとする。
大人たちの異常な変貌を救うために春日部防衛隊は立ち上がる!


みたいな概略でよろしかろうか?
20世紀博の舞台が大阪万博の1970年に設定されている。
高度経済成長真っ只中の時代の日本人たちの心は生き生きとして豊かだった。
比べて世紀末を迎えた2000年はその人の心が荒んでいるとしている。


テーマが非常に深いところにある。
ただそれは1960年代までに生まれた人々にとってであるような気がする。
あの時代を生きた人々の懐古主義的なものは根強いものがあると思うし
それを懐かしく思い、あの頃は良かった、戻りたいと思うことも自然だろう。
しかし時間は戻せはしない。
過去を振り返ることは決して悪いことではないが
過去に浸りすぎることは悪である。
未来を生き抜くことの大切さをサブテーマに据えながら
家族愛というクレしん普遍のテーマでこの映画を描いていた。


ひとついえるのは子供が見ても、
まぁアニメーションとしてのはちゃめちゃさや笑いで楽しめるだろうが
サブ的なテーマは伝わらないだろうなと。
かく言う俺自身も20代なわけで
昭和を懐かしむ気持ちなんざ文献やら何やらから知った憶測でしかない。
さらに言うなら大人の理論なんてめちゃくちゃなもんで
あの頃は良かったという懐古主義の一方で
あの頃は今と比べて物がなくて苦労した、不便だった、大変だった
なんて言いながら
ともするとそんな時代を生き今を作り上げた自分たちを賛美すらするわけだから。


時代の捉え方なんて多角的なものであるわけで
さらにその時代を生きた人でないと主観を交えることができないわけで
いっそうフィクションの世界としかいいえない。


この映画の演出としては当然
未来を生き抜くことを懐古よりも是としているわけである。
だから演出上は70年代を懐かしむべき時代として
一方的に肯定するような描き方をしている。
当然鑑賞者はその異常さを負だと捉えて
つまり、しんのすけ達の考え方に同調し
自然と未来を生きることの大切さに意識が向かう。
だからこの映画の演出は巧みなんだと思った。


70年代の負の側面を描いてしまえば逆にリアリティを持ち
それこそ懐かしむべき真実の時代として成立し
一部の大人にしてみれば戻れるならば戻りたい時代として
描き上げることさえ可能だったろうと思う。
だからまぁ要するに偽りの昭和を見せられたわけだ。
物語の中でも偽りの世界なんだし
偽りの世界だからこそ自分の生きた時代と置き換えることを可能とする。
つまり70年代という時代を知らない俺でも90年代として代替可能になるわけである。
その辺りまで含めて考えられていると思ったので深いなと感じたわけである。


なんというか映画の感想というよりは
懐古主義への個人的な解釈になったと言った方が正しいような内容になった。
が、ま、たまには良しとする。




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