死神の精度

死神の精度 (文春文庫)

死神の精度 (文春文庫)

休日を利用してやっと読み終わった。
最近疲れてたせいか通勤中のバス内でも寝落ちてて
なかなか読み進まなかったんだよなー。


先日重力ピエロを映画で観て
んで、小説では死神の精度を読むと
軽く一人伊坂祭りをした気分になりました。


構成は短編をオムニバス的に収録しつつも
それぞれが少しずつリンクしたりしていて面白い。
あとで知ったが、旅路を死神に出てきた男が
重力ピエロの春だというのもまた面白い。


以前チルドレンを読んだ時と構成的には似ていたと思う。
死の対象に選ばれた人間を、死神である千葉は調査を行い
1週間後に「可」もしくは「見送り」の報告を行う。
その調査対象の人間と死神の千葉とのやりとりで物語が進む。


普段生活を送っている分には何も疑問に思ったことがないようなことを
死神の視点から奇異なものとして映し出す。
解説ではそれを「異化」と読んでいたが、なるほどその通りだと。
死神は人間に、特に人の死に興味を持っていない。
あくまで仕事としてその調査対象を調べている。
ただそのやり取りの中で
人の行動を冷静に見て、面白いと思ったり、馬鹿げたものだと考えたりしている。
特異な死神がそういう態度をとることが、逆に人間らしさを感じさせる。
死神は調査対象の人間に、死についてどう考えているかをしばしば問う。
それは報告のために死を受け入れているかどうかを知るためのひとつなのだろうが
その問いに答える人間は、その問いに哲学的で、どこか他人事のようには感じる。
自分に置き換えているように表現しているものの、だ。
他人の死なんて身近なようで、意外と遠いものだ。
突きつけられても、自分は次の日には前を向いて進んでいく。
じゃあ自分の死は?
それこそ、いつか死ぬだけで認知することなんかできない。
そう、いつか死ぬだけ。
死なんて結局、非日常なもので、その非日常を、物語として非日常に描く。
だからか、死神が実際にいそうで、少し日常味を帯びたようにも錯覚した。
話の組み立て方とかが非常に凝ってて面白いなと素直に思った。
物語全体が終始暗いグレーで進んでいたせいか、
ラストの青が強い印象を残して、物語を締めくくり、
読後感がこんな物語だったというのに、思いのほか清々しかった。


物語の時間的な跳躍を感じさせない巧さとか
いろんな物語とリンクしてる部分なんかの遊び心。
そして言い回してみたいような名科白たち、伊坂節特有のミュージックとか。


人間とは眩しい時と笑う時に、似た表情になるんだな。




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